人事担当者が知っておきたい労働基準法の基本知識
労働三法の一つである「労働基準法」は、働く人の権利を守るための大切な法律です。賃金や労働時間、休暇などのルールを定め、企業が違反した場合は罰則が科されることで、労働環境の適正化を図っています。
企業と従業員の間で労働条件に関するトラブルが発生することは珍しくありません。しかし、適切な知識があれば防ぐことができます。人事担当者としては、労働基準法の基本をしっかり理解し、トラブルを未然に防ぐことが重要です。この記事では、人事担当者が押さえておくべき労働基準法のポイントを分かりやすく解説します。
労働基準法とは?
労働基準法は、労働契約や賃金、労働時間、休息、休日、有給休暇、就業規則など、労働条件の最低基準を定めた法律です。その目的は主に以下の2つです。
- 労働者が安心して働けるよう、企業が守るべき最低限のルールを定めること
- 労働者と使用者が公平な立場で労働条件を決められるようにすること
企業が労働者と契約を結ぶ際には、この法律の基準を下回らない条件でなければなりません。仮に労働者が合意したとしても、法律に反する契約は無効となり、法の基準が適用されます。
また、労働基準法に違反した場合、企業には罰則が科せられることもあるため、適正な運用が求められます。
この法律は、正社員だけでなく、パート、アルバイト、契約社員、派遣社員など、幅広い労働者に適用されます。ただし、フリーランスは対象外です。また、以下の労働者は一部の規定が適用除外となります。
- 農業、畜産業、養蚕業、水産業に従事する人(林業は除く)
- 管理監督者や機密業務を担当する人
- 監視業務や断続的労働に従事し、行政官庁の許可を受けた人
人事担当者が押さえるべき労働基準法の12の基本ルール
労働基準法は全12章で構成されており、特に人事担当者が知っておくべき基本ルールをまとめました。
- 労働条件の明示(第15条) 労働契約を締結する際、賃金や労働時間などの労働条件を明示する必要があります。
- 解雇の予告(第20条) 労働者を解雇する場合、30日前までに予告をしなければなりません。
- 賃金支払いの4原則(第24条) 賃金は「通貨払い」「直接払い」「全額払い」「毎月1回以上の一定期日払い」の原則に従う必要があります。
- 労働時間の原則(第32条) 1日の労働時間は8時間、1週間の労働時間は40時間を超えてはなりません。
- 休憩時間の付与(第34条) 労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければなりません。
- 休日の付与(第35条) 毎週最低1日、または4週間で4日以上の休日を設ける必要があります。
- 時間外労働・休日労働(第36条) 時間外や休日労働を行う場合は、労使協定(36協定)を結び、労働基準監督署へ届け出る必要があります。
- 割増賃金の支払い(第37条) 時間外労働(25%以上)、深夜労働(25%以上)、法定休日労働(35%以上)の割増賃金を支払わなければなりません。
- 年次有給休暇(第39条) 入社から6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した場合、最低10日の有給休暇を付与する必要があります。
- 就業規則の作成(第89条) 常時10人以上の労働者を雇用する企業は、就業規則を作成し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。
- 制裁規定の制限(第91条) 減給処分を行う場合、1回の減給額は平均賃金の半額以下、1回の給与支払期における減給総額は賃金の10%以下とする必要があります。
- 周知義務(第106条) 就業規則は、従業員が見られる場所に掲示するなど、分かりやすく周知しなければなりません。
働き方改革による労働基準法の改正
2018年の「働き方改革関連法」により、労働基準法には以下のような改正が加えられました。
主な改正ポイント
- 時間外労働の上限規制 これまで上限がなかった残業時間が、「月45時間・年360時間」までに制限されました。
- 年5日の有給休暇取得義務 年10日以上の有給休暇がある労働者には、5日以上の取得を義務付けています。
- 勤務間インターバル制度の推奨 終業から次の始業までに一定の休息時間を確保することが推奨されています。
- 中小企業の残業代割増率引き上げ 「月60時間超の残業に対する50%の割増賃金」が、中小企業にも適用されるようになりました。
労働基準法を正しく理解し、適切に運用しよう
労働基準法は、働く人の権利を守るだけでなく、企業が健全な労働環境を整えるための指針にもなります。違反すれば企業の信用を損なうだけでなく、法的な罰則も科される可能性があります。人事担当者として正しい知識を身につけ、適切な運用を心がけましょう。
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